2009年12月11日
釣魚余話
『釣魚 余話』
松岡 隆春
“タチウオ”
銀色に輝く細長い体は、切れ味鋭いサーベルのようであるが、この魚はれっきとした「サバ」の仲間である。海の表面を泳ぎ回る「マサバ」のような魚が、生活の場を深場に移して適応した結果、こんな体形になったといわれている。泳ぎは決して上手ではなく、群れがそろって口を上に向け、立ち泳ぎをしている姿は非常に勇壮である。しかし、エサの小魚などを襲う時には、勢いよく泳いで鋭い歯で捕らえ、取り逃がすようなことはない。時には共食いをすることもある。タチウオの表皮を覆っている銀色の成分は『グアニン』といわれる。過去には、このグアニンを集めてセルロイドで練って、模造真珠をつくったこともある。
“アオリイカ”
アオリイカは、モイカ・ミズイカ、それに幅の広いことが芭蕉の葉に似ていることからバショウイカと呼ばれることもある。この地方で、船のイカ釣りのターゲットといえば「スルメイカ」「アカイカ」「マイカ」の3種がメインであった。しかし、近年はいわゆる餌木(えぎ)を使って“エギング”で「アオリイカ」を釣らせる釣り船が目だってきた。釣期は、春・夏・秋の冬以外の季節。ルアーシステムに直接4〜4.5号のエギを付けて釣らせる場合もあるし、大物釣り・例えば秋のマダイ釣りの一番上のハリをエギに変えて釣らせる場合もある。身は厚みがあって柔らかく甘みがある。イカ類で最もおいしいといわれ、高級食材として取り引きされる。
“イワシの語源は?”
「イワシ=鰯」という名の由来は「弱(よわ)し」が転じたとするのが定説になっている。
魚に関する古い辞典「魚鑑」には、“イワシはヨワシの転ずるにて、この魚至って脆弱(ぜいじゃく)なるゆえに名づく”と記されているという。「鰯」という字は、弱魚の合字でこの魚が弱くて死に易いことを示している。イワシの腹を開くときは、包丁は使わない。指先でスッと開く。そのくらい身がやわらかいから鮮度が落ちるのも早い。
「イワシ」を下魚とする考えは古くからあった。「紫式部、その夫左衛門佐宣孝が外出たるに、イワシという小魚を食いければ、宣孝かえりきて、いやしきものをと笑いければ」云々とある。しかし今や、イワシは健康食品として脚光を浴び、高級魚の仲間入りをしようとするほどその地位は上昇している。
“カンパチ(間八・勘八)”
カンパチは、アジ科ブリ属の暖流系の魚である。姿かたちはブリやヒラマサとよく似ているが、体高がやや高く(すなわち側偏していて)、背面が赤みを帯びた灰色なので、簡単に見分けることができる。また、全長30cmぐらいまでの若魚“伊勢湾方面ではシオと呼ぶ”には、頭部背面に八の字形の明瞭な黒褐色の帯がある。東北地方以南に広く分布し、沿岸の表層を群れて回遊しているが、ブリよりも高い水温を好むようで、特に南日本に多い。ただし、日本海側ではあまり姿を見ない。日中は主に水深15〜20mのあたりをかなりのスピードで泳ぎ回る。肉食性で、アジやイワシのような小魚のほか、特にエビを好んで捕食し、全長1.5〜2mに達する超大物もいる。産卵は春から夏にかけて、南日本の海域で行なわれる。釣りは、磯または船釣りで、同じ仲間のヒラマサやブリなどに混じって釣れることが多い。釣り方は、オキアミを付け餌にした置き竿釣法・大型をねらう場合はムロアジの泳がせ釣りが主流である。一方、ルアーをよく追うので、磯や防波堤・浜などからルアー釣りで狙う人も多い。好期は夏から秋にかけての間。食味のよくなる旬もその頃である。普通釣れるのは全長30〜40cmの中型だが、刺し身・塩焼き・照り焼き・寿司ダネなどいずれも美味く夏のスタミナ食材として最高である。ただし、超大物は中毒をおこすばかりでなく味も落ちる。近年は、養殖も盛んに行なわれている。
“ヒラマサ(平政)”
「冬のブリに対して夏のヒラマサ」といわれる。旬は夏である。ブリに比べさっぱりした味で、夏の味覚として人気がある。見た目はブリにそっくりで、体の側扁度が強く、ややほっそりしている。側線に沿って吻端から尾柄にかけて濃い黄色の1本帯があり、体長は1m以上、10kgに達する。亜鉛が多く含まれるので、糖尿病・肝機能障害・味覚障害・骨粗しょう症などの人に良い。食べ方は、刺身・照り焼き・塩焼きなどブリと同じである。釣り方は、コマセ釣り・生餌釣り・ルアーフィッシングなど色々ある。
“魚の旬”
“旬”とは、ある食材がもっとも新鮮で、もっとも美味しく食べられる時期のこと。旬の時期になると、その食材が多く魚屋さんの店頭に並ぶため、値段も比較的安くなります。
「最近は、冷凍技術の発達や養殖技術の向上などで“魚の旬”が無くなってしまった」と嘆く人は多い。「一年中、食べたい魚が手に入るのは、便利で結構なことかもしれないが、季節(旬)を失うことは決して幸福なことではない」と私は思う。いまでは、新鮮で旬の魚を食べることができるのは我々釣り人と漁師さんだけかもしれない。“魚の旬”はその種類によって様々ですが、一般的に『産卵直前の時期』が“魚の旬”にあたります。改めて“魚の旬”を確認してみよう。
『春の旬魚』サワラ・サヨリ・トビウオ・アイナメ・マダイ・アナゴ・ニシンなど
『夏の旬魚』…アジ・カツオ・カンパチ・ヒラマサ・イシダイ・ハモ・キス・コチ・スズキ・イサキなど
『秋の旬魚』…サバ・サンマ・ハゼ・カマス・サケ・イワシ・ウナギなど
『冬の旬魚』…ヒラメ・ブリ・アンコウ・タラ・ボラ・キンメダイ・フグ・マグロなど
なお“魚を食べるときの旬と、釣るときの旬は必ずしも一致しません”のでご注意下さい。


